こんにちは。ボイストレーナーの金子太登(かねこたいと)です。
今回はアンザッツについて
とことん深く、そして分かりやすく解説していきます。
というのも最近公式LINEで、「アンザッツについて説明してほしいです」
という意見をたくさんもらったからなんですね。
確かにアンザッツっていうキーワードは聞いたことがあるけど、
でもその実態はあんまり詳しく知らない…
という人はかなり多いんじゃないかと思います。
もちろん、ボイトレをガッツリ勉強している人だったら知っている人もいると思うんですけど、
でもやっぱり一般的にはまだまだアンザッツというトレーニング方法は浸透していないのかなと
思うんですよね。
ただ、そんなちょっぴりマニアックなアンザッツですが、
僕は紛れもなくこのアンザッツに救われたのでこうしてキーボードを走らせています。
これは本当にいろんなところでお話ししているのですが、
僕自身、大学時代にこのトレーニング方法に出会ったからこそ、
歌唱力が劇的にグンと伸びたんですよね。
前に比べて高音の音域がかなり伸びたりだとか、
声量が出るようになったり、
声枯れしづらくなったり、
本当に昔の自分とは
声が見違えるほど出しやすくなって、歌唱力が伸びていったんですよ。
ちなみに今の歌唱はこんな感じです。
【音源:高音発声】
(最高音:hiC# , C#5)
【音源:歌唱】
(最高音:hiA , A4)
僕自身、アンザッツに出会えて声が変わりましたし、
生徒さんに教えていても、もちろん成長スピードに個人差はありますけど、
みんな着実に発声が良くなって、歌いたい曲を歌えるようになっているので
もっと多くの人にこの訓練法を伝えていけたらと思って、この記事を書くことにしました。
この記事を見ながらトレーニングを積んでいけば
皆さんがおそらく求めている、ミックスボイスとか、地声感のある高音、
よく響く声量、ビブラート、フェイク、
いろんなスキルに対応できるような自由な喉をを手に入られるようになって、
心から歌いたい曲を理想的な歌声で歌えるようになっていきます。
自分でいうのもおこがましいですけど、かなり貴重な情報を惜しみなく
解説していきますので
ぜひ記事を最後まで読んでみてくださいね。^^
この記事の構成としては、
① アンザッツの解説
② アンザッツの具体的なトレーニング法(音声付き)
の二本立てで解説していきますので、よろしくお願いします。
アンザッツとは?
アンザッツとは分かりやすくいえば、歌に必要な喉の筋肉を鍛えるトレーニング法のことです。
言い換えれば、喉の筋肉トレーニング(喉の筋トレ)ですね。
たとえば、
高音を出すために必要な筋肉を鍛えたり、
声量を出すために必要な筋肉を鍛えたり、
そんなふうにして、喉にある様々な筋肉をバランスよく鍛えていくこと。
これこそがアンザッツなんですね。
ただ、こんな話をすると
「なんでわざわざ喉の筋肉なんざ鍛えなきゃならんの?」という話になると思います。
でもその理由はシンプルで、
歌うこと=喉の筋肉運動だからです。
これはスポーツと同じですね。
たとえば、僕らが走ったり歩いたりするときは、脚や腕の筋肉を使うと思うんですね。
歌もそれと同じで、紛れもなく「喉の筋肉」を使って
ありとあらゆる種類の声を出していくわけです。
高音も、低音も、大きな声も、小さな声も、
息っぽい声も、芯のある声も、、
全部喉の筋肉を使って出していきます。
だからこそ、喉の筋肉をバランスよく鍛えてしまえば、
ミックスボイスを始めとする
あらゆる声が出しやすくなって歌唱力がグンと高めることができるんです。
じゃあ具体的には、どうやってアンザッツトレーニングをやっていけばいいのか?
ということをとことん解説していきます。
アンザッツトレーニング
アンザッツでは
喉周りにある、喉を4方向に動かせる筋肉をとことん鍛えていきます。
【図:喉を4方向に動かす筋肉】
図を見てもらえたら分かるかもしれませんが、
喉周りにある筋肉たちは、喉を4つの方向に動かせるようになっているんですね。
具体的には、
前上方向(鼻方向)、前下方向(胸方向)、後ろ上方向(後頭部)、後ろ下方向(うなじ方向)、
この4つの方向に喉を動かせます。
そして、この筋肉たちを鍛えていくのがアンザッツのメインの作業になってきます。
具体的には7つの声色を使って、喉を4方向に動かしていきます。
これをやっていくことで、喉の機能が根本から高まって、
ミックスボイスはもちろんあらゆる種類の声が圧倒的に出しやすくなっていくんですね。
それぞれ声の出し方を解説していくので、一緒にやってみましょう^^
アンザッツ1
アンザッツ1では、喉を前上方向に動かす筋肉(甲状舌骨筋)を鍛えていきます。
【図:アンザッツ1で鍛える筋肉】
志村けんさんみたいなペラペラした平べったい声を出して鍛えていきましょう。
母音は「イ」で、前歯が全部見えるくらいに大きく口を横に開くのがポイントです。
【参考音源:前上「イ」】
アンザッツ2
アンザッツ2では、喉を前下方向に動かす胸骨甲状筋(きょうこつこうじょうきん)を鍛えていきます。
【図2:アンザッツ2で鍛える筋肉】
トレーニング方法としては、ミュージカル俳優や、アニメなどに出てくる悪党のような
わざとらしい深みのある声を出していきます。
参考音源にある通り、
「はっはっは!」こんな感じですね。
【参考音源】
間違っても、イケボなんて目指してはいけません。w
わざとらしい深みのあるザ・ダンディな声を出していくわけですね。笑
ぜひ意識しながら頑張って練習していきましょう!
アンザッツ3a
アンザッツ3aでは、喉を後ろ下方向に動かす筋肉を鍛えていきます。
【図:アンザッツ3aで鍛えられる筋肉】
声の特徴としては、ズバリ「ボビーオロゴン」です。笑
野太い声で、アンザッツ2に比べてこもった印象が強い声です。
【参考音源】
最初はうなじ方向に喉を引っ張る意識を持てなくても大丈夫なので、
ボビーの深い声を真似して練習してみてください。
(詳しくは後述しますが、発声の感覚は後から必ずついてきます。)
喉が下がりやすい母音「オ」で練習していきましょう!
アンザッツ3b
アンザッツ3bはちょっと特殊でして、今まで鍛えてきた筋肉やこれから鍛える筋肉(つまり喉周りの全ての筋肉)
上手に使っていくトレーニングと思っていただければと思います。
言い換えれば、ミックスボイスの練習ですね。
地声と裏声をスムーズに繋げる声を作っていって、高音を楽に出せるようにしていく訓練がアンザッツ3bです。
【図:アンザッツ3bで使う筋肉】
【参考音源:アンザッツ3b(歌声)】
(最高音=hiC/C5)
【参考音源:アンザッツ3b(単体)】
聴いてもらうと分かる通り、平井堅さんみたいな柔らかい高音ですね。
裏声にも聞こえる、優しいイメージの声です。
間違っても、西川貴教さんみたいなマイクをぶち壊すような破壊力のある声を
出さないでくださいね。w
(それはまた別の「ベルティング」というテクニックを習得する必要あり。)
【参考音源:ベルティングでの歌唱例】
(※ 最高音=hiC/C5)
練習方法としては、声量小さめの地声でハミングします。
低音から徐々に高音までひっくり返らないように注意しながら発声するのがポイントですね。
もちろん、最初は声がコロッと裏返ることも多いと思うんですけど、これも
やっていくうちに地声と裏声のバランスが取れるようになって、ひっくり返りは徐々に治まってきます。
根気強く続けていきましょう!
【練習音源】
アンザッツ4
アンザッツ4では、喉を後ろ上に持ち上げる口蓋咽頭筋、茎突咽頭筋を鍛えていきます。
【図:アンザッツ4で鍛えられる筋肉】
声の出し方としては、まさに「ミッキーマウス」のモノマネです。
こんな感じですね。
【参考音源】
女性の声楽家さんをイメージしてもいいかもしれません。
母音は「お」で声を出して練習していきましょう!
アンザッツ5
アンザッツ5では、喉を前上に引き上げる筋肉を鍛えていきます。
【図:アンザッツ5で鍛えられる筋肉】
ただ、今回はアンザッツ1のように地声ではなく“裏声で”トレーニングをしていきます。
こんな感じです。
【参考音源】
ハッキリ言って奇声に近く感じると思いますが、真っ当なトレーニングなので
一緒に頑張っていきましょう。笑
母音は「イ」で練習していきます。
アンザッツ6
アンザッツ6では、喉を後ろ下に引き下げる筋肉を鍛えていきます。
【図:アンザッツ6で鍛えられる筋肉】
アンザッツ6の特徴としては
アンザッツ4(後頭部の方向)に比べて、さらに深みのある声で
うなじに響くのが特徴です。
トレーニング方法は
「ヒョ」でうなじを意識して太い裏声を出していきます。
【参考音源】
【練習音源】
もちろん、最初はうなじに響きなんか感じないですし、感覚は「無」だと思います。
僕も同じでした。
でも最初はみんなそうなので、大丈夫です。
だんだんとトレーニングしていくうちに、喉が後ろに引っ張られる感覚、もしくは
喉をうなじ方向に引っ張れる感覚が分かってきます。
(これはこの後も話しますが)結局発声の感覚は、喉の筋肉が鍛えられた結果として、
初めて分かるからですね。
たとえば僕もそうでしたが、
アンザッツ4の声色をモノマネして、
喉を後ろ上に引っ張る筋肉をガシガシ鍛えていったからこそ、
その結果として頭に響く、という感覚が分かったんですね。
あるいは、喉を前下に引っ張る筋肉が鍛えられたからこそ、
胸に響くという感覚も分かるようになったわけです。
こんなふうにして、普段からアンザッツの声色を正しくモノマネしてさえいれば、
後から感覚はついてきます。
だからこそ、今感覚が分からなくても安心してトレーニングしていきましょう!
それでは、ありがとうございました。
何時間もやり続けるのは駄目ですかね笑