こんにちは、ボイストレーナーの金子太登です。
僕がミックスボイスの練習をしていたときに、
「あの歌手は高音が出せるけど、ミックスボイスなんだろうか。」
「歌手って本当に全員ミックスボイスなのか?
苦しそうに歌っている人も多いけどなあ。」
と、とにかくプロの歌手がどんな発声で歌っているか気になってしかたない時期があったんですよね。
そして、そんなふうに思っていたのは今思えば正解だったなと思ってます。
というのも、歌手がどんな発声で歌っているかを知ることは、憧れのアーティストがいる場合でもそうでなくても
これからの発声開発に大きく役立つからですね。
どんな声が一流なのかを知ることで、声を聴き分ける耳も育ちますし、ボイストレーニングで成長してくスピードも早くなります。
そこで、今回は
質の高いミックスボイスで歌う歌手を紹介し、さらに
ミックスボイスを確実に習得するための3つのステップまでを丁寧に解説します。
では、いってみましょう!
目次
ミックスボイスで歌う歌手
さっそく、ミックスボイスで歌う歌手を解説していきたいと思うのですが、
最近「歌手は全員ミックスボイスで歌っているのですか?」と質問をもらうので、先にサクッとお答えしておきますね。
結論、歌手だからと言って、全員がミックスボイスではないです。
もちろん、ミックスボイスをどう定義するかにもよるのですが、”低音の地声から高音の裏声までが
ズルズルと一本に繋がるのがミックスボイス”
という定義なら、中音域あたりで苦しそうに高音を出している歌手もいますし、
歌手なら全員がミックスというのはかなり無理があります。
その上で、僕が完成度の高いミックスボイスで発声されていると考えるアーティストさんを解説していきますので、
参考にしてくださいね。
スピッツ 草野マサムネさん
スピッツの草野マサムネさんは、相当にレベルの高いミックスボイスだと考えています。
普通は、高音になると息の勢いに頼ったりして力んでしまいがちなのですが、
草野さんに関しては、そういった余計な力みが”一切”ありません。1mmもです。笑
あそこまで力みのない高音を発声できるアーティストさんはプロでも一握りです。
ボイストレーニング的にも素晴らしい手本となる歌唱なので、最初から草野さんの発声を参考にしてミックスボイスの練習に取り組むと上手くいきやすいと思いますよ。
西川貴教さん
西川さんは、太くて力強い地声感のある高音が素晴らしい一流のアーティストさんですが、いい意味で参考にならないかもしれません笑
というのも、ミックスボイスを習得していく最初の段階では、基本的に弱々しい声になりがちですが、
その時期に、いきなり西川さんの完成度の高すぎる太い高音を真似してしまうと発声が崩れてしまう可能性が高いからです。
僕の生徒さんでも、初期の弱々しい時期をグッと耐えられずに、カラオケに通い詰めて西川さんの曲を歌いこんだ結果、
せっかく整えた発声のバランスが一瞬で崩壊したことがあります汗
言うまでもなく、そこから発声を立て直すのとても大変でした。
もちろん最終的に西川さんの豊かな歌声を目標にするのはとても素晴らしいのですが、あまりの完成度の高いパワフルな発声であるからこそ、最初から参考にしてしまうと
悲惨なことになる可能性が高いので注意が必要です。
L’Arc〜en〜Ciel hydeさん
hydeさんも低音から高音まで幅広い音域を歌いこなす素晴らしいアーティストさんです。
特に注目していただきたいのは、hydeさんの場合、低音をしっかりと鳴らせるアーティストさんという点ですね。
当たり前なのですが、高音が得意なアーティストさんは、低音が苦手でスカスカになることが多いのですが、
hydeさんにはそれがありません。
低音もしっかりと分厚い声で鳴らしながら、さらに高音も太く出せる稀有なアーティストさんなのです。
低音があれだけきちんと鳴らせるのに、高音はhiD(D5)前後まで歌でしっかりと使いこなす発声能力の高さには本当に脱帽です。
ただし、西川さんと同じで、いきなりこのようなパワフルな発声を目指すと発声が崩れて上手くいかない可能性が高いので、
注意してくださいね。
平井堅さん
平井堅さんの場合は、裏声に近い美しいミックスボイスが特徴的な素晴らしいアーティストさんですね。
低音域からかなり柔らかい地声で歌うことで高音域までスムーズに繋いで歌うタイプのアーティストさんでして、
繊細なコントロールは一級品です。
高音を大きな地声で叫んでしまう方は、小声で柔らかい声で平井堅さんの曲を歌うと余計な力みが取れるきっかけになるかもしれません。
いい意味で教科書的な癖の少ないミックスボイスなので、これからミックスボイスを習得していく方はぜひ参考にしていただきたいアーティストさんです。
ナオト・インティライミさん
ナオト・インティライミさんも、ミックスボイスの質がとても高いアーティストさんです。
柔らかいミックスボイスは思った以上にコントロールが難しくて、キンキンしたり
張り上げたりしがちなのですが、ナオトさんは柔らかい発声を上手に使いこなして歌われています。
柔らかいミックスボイスが暖かみのある声をさらに引き立てていて、本当に素晴らしいアーティストさんです。
ミックスボイスを習得するための3ステップ
ここからは、本当の意味でミックスボイスを習得していくための3つのステップを解説していきます。
もちろん、ここで解説するのは着実に成果を出すための正攻法です。
ちゃんとやれば確実に結果が出ます。
だから
「一瞬で!ミックス!」とか
「1日でできるミックス!」
みたいな小手先のコツは紹介しません。全然効果ないので。
そういうコツで成長できないのは分かっているかもしれませんが、そういうのを探している方は別のサイトを探してみてください。
ということで、本気でミックスボイスを習得したい人はこの先も集中してみていってくださいね。
STEP①地声と裏声を分けよう
まず最初に、地声と裏声を丁寧に分けて発声できるようにしていきます。
「いや、地声と裏声が分かれているから困っているんだ!」と思うかもしれないですが、
実はほとんどの人が、地声と裏声がごちゃごちゃに絡まった状態になっていて、綺麗に切り離して発声することができないんですね。
- 地声を出そうとしても、裏声が混ざってしまう
- 裏声を出そうとしても、地声が混ざってしまう
こんな状況にある方が多いんですね。
【図解:地声と裏声が絡まった状態】
だからこそ、いきなり地声と裏声を混ぜようとするのではなくて、地声と裏声をちゃんと徹底的に分けるようにしましょう。
100%の地声
まずは、100%の地声を出してみましょう。
普通に「ア」と地声を出すだけでOKです。出しやすい音域で出してみてください。
【参考音源:100%の地声】
この時、息が漏れたりしないように注意しながら力強い地声を出してくださいね。
100%の裏声
次は100%の純粋な裏声ですね。
純粋な裏声は息がたくさん漏れた裏声です。
「フー」と息を漏らして発声してみましょう。出しやすい音域でOKです。
【参考音源:100%の裏声】
こんな感じで、地声と裏声を徹底的に分離すると、のちのち地声と裏声をミックスさせやすくなるので、
面倒なんですけど、ちゃんとやっておくことをオススメします。
STEP② 地声と裏声を鍛えよう
STEP①で分離した地声と裏声を丁寧に育てて強化していきます。
ふつうは、地声と裏声の筋力バランスに差がありすぎるので、
それを同じくらいのバランスに整えてあげる必要があるんですね。
【図:地声と裏声の筋力バランスが悪い】
地声と裏声のバランスが悪い状態ですね。
【図:地声と裏声の筋力バランスが良い】
(トレーニングによって、地声と裏声のバランスが取れた状態です。こっちを目指していきます。)
地声と裏声の筋力バランスが整うと、これまたのちのち地声と裏声を混ぜやすくなるので、
ちゃんと鍛えておきましょう。
地声を鍛える
まず地声です。地声を徹底的に鍛えていきます。
変な薄っぺらい声で「イ」と声を出してみましょう。
【参考音源:薄っぺらい変な声で「イ」】
裏声を鍛える
次に裏声ですね、これはシンプルです。
何も考えずに、何も意識しないで裏声「ホー」と出してください。
え?何も考えないの?と思うと思うんですが、
そのままちゃんと継続していけば、裏声は徐々に力強く声量も出るようになってきます。
昔の僕みたいに、「おりゃー!!強い裏声じゃー!!」
と、それこそ裏声にエッジボイス を混ぜるとかしちゃいけません笑
【参考音源:何も考えずに裏声を出す】
じっくりと裏声が育つのを待ちましょう。何も意識しないのがポイントです。
SETP③ 地声と裏声を混ぜよう
最後はいよいよ、地声と裏声を混ぜていきましょう。
今まで整えてきた素材を使って、ミックスボイスのトレーニングをしていきます。
そうすることで、低音から高音までひっくり返ったり張り上げたりすることなく歌えるようになります。
本当にたくさんのトレーニング方法がありますが、ここでは分かりやすい方法を1つ紹介します。
地声と裏声を混ぜるトレーニング
小さい声で地声を出します。
小さい声で地声を出そうとすると、どうしても裏声になりがちなんですが、
そこをちゃんと我慢して小さい地声で踏ん張るイメージです。
【参考音源:小さい地声】
出しづらいちょっと高めの音域でやるのがポイントで、
C4〜E4(真ん中のドレミ)あたりでやるのがオススメです。
これができたら、徐々に声を大きくしていきましょう。
【参考音源:声を大きくしていく】
苦しくならず、裏声ではない声で出せていればミックスです。
感覚的には、軽い地声って感じですね。
とはいえ、今できなくても全然問題ないですよ。
継続していく事で少しずつミックスボイスに近づいていくので、コツコツ頑張っていきましょう。
[…] を詳しく解説した記事 ミックスボイスで歌う歌手|実例から学ぶミックスボイス […]
藤原基央さんはどうなんでしょうか?
yu_yu様
繋声~mastering mixedvoice~の記事をご覧いただいて誠にありがとうございます。
藤原基央さんは、完全な地声と思われる方も多いかと思いますが
繋声~mastering mixedvoice~では誤解を恐れず言えば「不完全なミックスボイス」
と推測できると考えます。
本来の意味でのミックスボイスを当サイトでは、低音域から高音域まで声が繋がった状態と
定義しておりますが、それに当てはめて彼の発声を考えた場合
例えば「天体観測」のサビ 「イマ」という ほうき星 君と二人追いかけていた
追いかけるの「か」に着目しますと、この音域は当サイトの定義するミックスボイスであれば
力みもとくになく、するっと発声できてしまう音域にも関らず
藤原さんは張り上げ気味でがなって歌っています。
もちろん表現としての「がなり」もここに含まれていると思いますが
それにしても裏声がきちんと融合した状態での地声強めの発声(ベルティングと呼んだりもします)
の音色とは全く異なっています。
このような観点からもあくまでも推測にはなりますが
・裏声の筋肉はある程度低音域から働いている→完全な地声とは言えない
・中音域で少々張り上げ気味に歌う→完全に裏声と融合はしていない
⇒完全な地声でもなく完全なミックスボイスでもない
「不完全なミックスボイス」で歌われている
とのお答えになります。
ご質問等ございましたら、コメント欄またはレッスン予約フォームからお気軽に質問していただけたらと思います。
今後とも繋声~mastering mixedvoice~をよろしくお願い致します。
1年間ボイトレしてもミックスボイスを出せません。金子さんがミックスボイスを出せた瞬間は何をしていましたか?練習してだんだんミックスになってきた感じですか?
(アーと発声して口を閉じないでそのままンーと発声したらミックスボイスが出たという人がいましたが自分は何回やってもなりませんでした。)
親方_女将様
繋声~ mastering mixedvoice~の記事をご覧いただきまして、誠にありがとうございます。
僕は、正しい練習法を地道に続けて、段階を踏んで徐々にミックス出来るようになりました。
割と喉周りの筋力バランスや神経支配が元々整備されている方が
そのような「コツ」でミックスのきっかけを掴むこともありますが
ほとんどの方は段階を踏んで徐々に訓練していくことが結局近道だと考えております。
僕の最新の記事のミックスボイスの練習法の記事をご覧になっていなければ是非ご覧になってみてください。
また、失礼ですが親方_女将様の性別を教えていただけますと
もう少し具体的なアドバイスをさせていただけるかもしれません。
宜しくお願い致します。
返信ありがとうございます。これからは正しい練習法を始めていきたいと思います。記事も拝見します。m(_ _)m
是非、地道ですが効果のあるトレーニングをおススメします。
もし、わからないことがありましたら、
無料カウンセリングも承っておりますので、是非ご活用くださいませ。
これからもよろしくお願いいたします。